突然ですが、「QC活動」って聞くと、「難しそう」「面倒くさい」と感じていませんか?
QCはQuality Control(品質管理)の略ですが、これは決して管理者だけがやる難しい仕事ではありません。
QC活動とは、現場で働く私たち自身が
「もっと良い製品を作る」「もっと効率的に働く」「もっと安全な職場にする」ために、
自分たちの知恵と工夫で職場を良くしていく活動です。
別名「QCサークル活動」や「小集団改善活動」とも呼ばれます。
このブログでは、前半では工場で働き始めたばかりの初心者の方にもわかりやすく、
QC活動の基本から具体的な進め方と自分の実体験を
後半では、現場での実態も添えて解説します!
☆この記事を読んでわかる事
- QC活動の内容と実態
一般的にQC活動と言われる活動の概要の解説と紹介
- QC活動の進め方
QC活動の基本的な進め方を実体験と共に紹介
- 現場の実態と本音
QC活動においての現場での実態と本音及び現実的なポイント
QCの「QC」って何?
QCはQuality Control(品質管理)の略です。
QC活動では、この品質管理の考え方や、データを基に問題解決を進めるための
「QC手法(QC七つ道具など)」を用います。
QC手法(QC七つ道具など)については、下記リンクをご参考願います。
参考:QC7つ道具ってどう使うの?いまさら聞けない品質改善の基礎
QC活動の概要

QC活動は、単に「品質を良くする」だけでなく、以下の3つの基本理念のもとで行われます。
メンバー一人ひとりが主体的に考え、行動し、成長することを目指します。
フラットな立場で議論し、チームワークと達成感を通じて、働く意欲を高めます。
品質向上、コスト削減、生産性向上など、具体的な成果を通じて会社全体の発展に貢献します。
QC活動の進め方:2つのストーリー

QCストーリーには、大きく分けて「問題解決型」と「課題達成型」の2種類があり、
テーマに応じて使い分けます。
- 問題解決型 (発生した悪さをなくす)
「今、困っている問題」の原因を徹底的に突き止め、
それを解決して本来あるべき姿に戻すためのストーリーです。- 課題達成型 (新しい高みを目指す)
現状に大きな問題はないけれど、「もっと良くしたい」「新しいことに挑戦したい」という、
より高い目標を達成するためのストーリーです。
一般的な進め方
ここでは、最も活躍する場面の多い「問題解決型」を例に進め方のステップを解説します。
職場で今一番困っていることを選ぶ。→ 「加工作業でのミスによる手直し時間を減らす!」 |
三現主義(現地・現物・現認)で現状をデータで把握し、目標を設定。
→ 現状: 月平均30時間の手直しが発生。目標: 3か月後に月10時間以下に削減。
スケジュールとメンバーの役割分担を決める。
データに基づき、
なぜなぜ分析や特性要因図(通称:魚の骨)で真の原因を探る。
→ 真の原因: 「似たような部品の識別が難しく、寸法設定ミスが起きている」と特定。
真の原因を解消する対策を立案し、実行する。ECRSの視点も活用。
→ 対策: 似ている部品は色分けし、寸法設定のチェックシート(フールプルーフ)を作成・導入。
効果の確認
対策後のデータを取り、目標達成度を定量的に評価する。
→ 対策後3か月間の平均手直し時間を測定。
結果: 月8時間となり、目標達成。
歯止め・標準化
効果のあった対策を正式なルールとして定め、定着させる。
→ 作成した色分けルールとチェックシートを標準作業手順書に組み込む。
活動を振り返り、残った課題や次期テーマを決める。
QC活動を成功させるための3つのコツ

特に工場で働く初心者の方にも役立つ、活動を円滑に進め、成果を出すためのコツを説明します。
テーマ選びのコツ
- 「自分たちの困りごと」から選ぶ
現場のメンバーが日々「不便だ」「無駄だ」と感じていることを選ぶと、モチベーションが保ちやすいです。
- 「手の届く範囲」にする
初めは、大掛かりな設備投資などが必要なく、自分たちの工夫と努力で解決できる、小さく具体的なテーマを選びましょう。
小さな成功体験を積み重ねることが重要です
(例:「〇〇を探す時間の削減」「△△ミス件数の削減」)。- 数値化できるテーマを選ぶ
効果が「不良率○%削減」「時間○分短縮」のように、
客観的に評価できるものにすると、達成感が得られやすく、
報告もしやすくなります。
進め方のコツ
- 心理的安全性の確保
誰もが自由に意見を言える、安心して話せる雰囲気を作ることが
最も重要です。「そんなの無理だよ」「前にもやったよ」といった
否定的な発言はしないよう注意しましょう。- 役割分担と協働
リーダーだけでなく、メンバー全員が
「データ収集担当」「資料作成担当」「原因分析担当」などの
役割を持ち、全員が参加している意識を持つようにします。- 「なぜなぜ分析」の徹底
原因を探るステップ(ステップ4)では、表面的な原因で終わらせず、
「なぜ?」を最低5回繰り返して、
根本的な原因(真因)を突き止めましょう。- ECRS(イクルス)の視点を持つ
対策を検討する際に、以下の4つの視点から考えると、
斬新で効果的な案が出やすくなります。
モチベーション維持のコツ
- 「見える化」と「承認」
活動の進捗状況や改善効果をグラフなどで分かりやすく掲示し、
「ここまで進んだ」「これだけ成果が出た」と目に見える形にしましょう。- プロセスも評価する
結果だけでなく、「データ収集を頑張った」「良いアイデアを出した」といった活動プロセスに対しても、リーダーや上司がねぎらいの言葉や承認を伝えると、メンバーのやる気が高まります。
- 定期的な短いミーティング
長くダラダラやるよりも、週に1回15〜30分など短時間で集中して進捗確認のミーティングを行う方が、日常業務との両立がしやすくなります。
実体験からの具体例

過去私が前職の職制だった際に、実際に行った活動の一部を例に紹介、解説します。
前職:電子部品・半導体関連
活動内容:使用材料の廃棄量削減
活動期間:半年
サークル名:叙々苑

Onobuさん
もし優秀賞になったら賞金がもらえる為、その賞金で叙々苑の焼き肉に行こう!というメンバーからの提案でサークル名を決めました。
日々生産で使用する材料の廃棄を減らすことで、購入経費を抑制する。
当時は経費抑制を強く推奨されていたとともに、最も経費を使っていたのが、
普段携わっている材料だった為、
メンバーの馴染みも良いと判断し、このテーマで取り組みました。
メンバーはライン作業者と職制である僕、メンバーは当然知識が不十分である上に、
僕もQCは概要的にしか知らない為、
メンバーをラインから外した所で、徒労になるだけなので、
現状把握の段階はほぼ僕が主体で進めました。
現状把握の結果からメンバーのライン作業の知見で
「ライン停止時の設備状態の見直し」、「材料かんばんの改訂」「事前準備方法の見直し」の
アイデアを出し、生産技術部を巻き込んで実行しました。
ここは案出し~方法、実行までをメンバーで実施してます。
僕は職制として、案の具体化と実行するためのメンバーの選定とラインから外す為の業務調整、生産技術への協力依頼を行いました。
効果の確認は、ほぼ僕が行っています。
というのもメンバーにはライン作業がある上、データの前後比較やまとめまでは
ノウハウが無いと厳しい上に教育する時間も無いと判断した為です。
後は、他部署を巻き込んでしまった以上、それなりのデータを持っていかないと、
次回から協力してもらえないと感じたのもあります。
メンバーには効果の結果をどうやって出したかを含め、公表しただけです。
歯止めに関しては、案出し・実行はメンバー、案の具体化と他直展開は僕が行ってます。
具体的には設備の管理方法を変更する為、間違い防止の明示作成をメンバー、
展開は他直への職制へ説明が必要なので、職制である僕が行ってます。
これで活動はクローズしましたが、結果として一応削減目標は達成できました。
しかし、「全員野球」とはいかないです。ほぼ僕が裏方作業を行ってます。
ただ、僕自身はメンバーがライン作業者である以上、ある程度は仕方ないと思い、
ある意味納得した形でクローズできたと思います。
これを数回繰り返し、2年後には、
やっと僕は6割ノータッチの作業者主体でのQC活動を行えるまでには、成長しました。
正直な本音

これを言ってしまったら、これらを生業としている方々から「そうじゃない!」って叱られちゃいそうですが、
僕は、このQC活動自体が後付けストーリーを違和感なく仕上げる茶番劇と思っています。
そして、何より本来の業務以外で自主的に行おうとする(させる)姿勢がとにかく不合理と感じ、嫌いです。
職制であれば、負荷はありますが、業務の範疇と思い、それなりに前向きに活動していましたが、
本音では、
「やりたい奴がやりたいテーマに沿って見合った人材を選んで勝手にやっててほしい」そう思っています。
何故嫌なのか?
僕が嫌いな理由を列挙します。
- 計画通りに事は運ばない
- 失敗できない
- 上司は部下に丸投げで口だけ参加
- 次回以降は新人に丸投げ
計画通りに事は運ばない
大体活動期間は半年間位だと思います。
そして活動計画自体は、それっぽく且つみっちりと充実していないと、審査員は満足しません。
なので、それっぽく計画を立てますが、そもそも本業の合間で活動する事がほとんどなので、
思惑と違った結果が出た途端に計画は破綻します。
計画通りに結果が出る事が稀なので、そういった事態にも対処出来る様に、
計画を管理遂行する人間は、QCを本業の一部にできる「職制」や「管理できるポジション」の人がやればよいのではと感じています。
失敗できない
我々のサークルのテーマは○○です。結果は失敗でした!
こんな潔い報告してる人は僕の知る限り遭遇していません。
なぜなら、表向きは未達成でもやるだけやったなら仕方ないと言いながらも、
実態は、失敗で終わらせて貰えないからです。
活動して何が得られたか?今後はどう進めるのか?
解決した時よりも更に深堀して報告する必要がある為、手間が増えます。
だから言葉巧みに話を盛り、あたかも上手くいったかのように報告する事が増えるのでしょう。
上司は部下に丸投げで口だけ参加
「今日はQCの時間だけど進んでるか?」こんな上司よく見ます。
せめて「俺にも何か協力出来る所あるか?」くらいは言ってほしいです。
メンバーが全員、職制や生産技術なら100歩譲って良しとしましょう。
しかし、普段ライン作業しかしていない作業者の集まりです。
自分たちの工程で日々の不良の内容、発生率、不具合箇所、経費の状況、部材の消費諸々
全て把握している作業者はいません。
というかそれは作業者の業務ではありません。
日々職制から朝会等で伝えても、自分たちの実務に直結していない内容など、
ほとんどの作業者には関心も無いからです。
故に何が問題となっているか知らない為、何に取り組むべきかわからないのが実態です。
次回以降は新人に丸投げ
上記を理由にあまり前向きに活動する事が出来ず、QC活動=面倒な仕事になります。
そして新人の成長の為と理由付けして、フォローも無しに新人へ丸投げする職場も珍しくないでしょう。
知識も経験もフォローも無い新人ですから、ストレスに感じてしまうでしょう。
僕は初回はまさにこれでした。
僕なりの進めるポイント

僕が感じるQC活動を進めるポイントを紹介・解説します。
これが正解と言い切れませんが、嘘と茶番を考える事は避けられます。
計画管理は職制及びライン外へ任せる
上記でも書きましたが、計画通りに事は進みません。
計画線を引っ張るだけなら、ライン作業者でもできますが、計画通りに事が進まない場合の代替案や方向性はライン作業では考えられません。
というかそんなこと考えながら作業したら作業ミスして本末転倒です。
もしライン作業者が計画管理するなら、せめて「QCリーダー経験者」
そうでないなら、考える時間はラインから外れられるように職制の気配りやフォローが必須だと考えます。
テーマ選定は複数持つ
失敗しました!こんな潔い報告をする気であれば、気にしなくてよいです。
しかしそうでないなら、
なるべく自部署内で完結出来そうなテーマを複数持ち、万が一のテーマ再選定に備えましょう。
上司を巻き込む
僕も実際そうでしたが、上司も何をすれば良いか?進め方をよくわかってません。
なので必ず上司は巻き込みましょう。
そして壁に当たったら必ず上司に報告・相談しましょう。
上司も自分事として参加して貰えるように、常に相談し、会合の際も参加させましょう。
テーマに合わせてメンバーを選ぶ
これは、難しい職場もあるかもしれません。
そもそもQC活動は自発的な活動なので、テーマや進捗に合わせて都合の良いメンバーにしましょう。
正直、反対意見は阻害でしかありませんし、やる気のない人は活動士気の低下に繋がります。
全員参加を必須とする職場であれば、必ず上司を巻き込みましょう。
リーダーを新人にするなら、必ず横に上司を据えてフォローを促しましょう。
QCストーリーは一旦保留
ここは元々生産技術であった僕の意見でもありますが、
現場のメンバーだけで活動できるテーマは会社の行く末を左右する様な案件はまず無いです。
その為、とにかく現場目線で失敗を恐れずに、疑わしい所は積極的に改善を繰り返しましょう。
そして一通りが済んでから、後付けでQCストーリーにする。
こちらの方が現場らしい泥臭さが出てリアルなQCっぽさが伝わるのでは無いでしょうか
まとめ

QC活動自体は確かに品質向上・コスト削減などの「短期的な成果」と、
自ら考え動く人材と強いチームを育む「長期的な投資」としては必要だと思いますが、
実態としては、形骸化された文化になってしまっている事も少なくないです。
始めるキッカケは自発ではなく、会社からの指示であることが多いですが、
やるからには、自己の成長の機会と考えを切り替えて、大きな効果は出ずとも、しっかりと自分の身になる活動にしたいですね。
さぁ 皆さんも工場で働いてみませんか?