工場には、製品を実際に作る「製造部門」と、それを支える「間接部門」があります。
その中でも、工場の心臓部とも言える生産技術(Production Engineering)。

「生産技術って具体的に何をするの?」 「製造部門とはどう違うの?」 「理系じゃないと無理?」

そんな疑問を持つあなたへ。
工場勤務28年、現場も職制も経験してきた私(Onobu)が、教科書には載っていない
「生産技術の実務と本音」を解説します。

結論から言うと、生産技術は「設計図を、お金を生むラインに変える翻訳者」です。

☆この記事を読んでわかる事

  1. 生産技術の仕事の流れ(立ち上げから改善まで)が丸わかり
  2. 現場で本当に評価される「泥臭いスキル」の正体
  3. あなたが生産技術に向いているかどうかの判断基準

生産技術とは?「設計」と「現場」をつなぐ翻訳者

Wikipediaなどの定義は小難しいですが、現場目線で言えば役割はシンプルです。

「どうやって効率よく、安く、安全に作るか」を考え、その仕組みを作ること。

設計者が描いた「図面」は、そのままでは製品になりません。
それを誰でも・同じ品質で・大量に作れるようにするのが生産技術の仕事です。

仕事は大きく分けて以下の4つのフェーズで進みます。

  1. 工程設計(どうやって作るか決める)
  2. 生産準備(設備や道具を揃える)
  3. 量産立ち上げ(実際に流して調整する)
  4. 工程改善(もっと良くする)

それぞれ、具体的な中身を見ていきましょう。


1. 工程設計:すべてはここから始まる

製品をどのような手順と設備で作るのが最適か、「生産のレシピ」を作るフェーズです。

生産方式の検討

製品の特性に合わせて、作り方を決めます。

  特徴 代表例
ライン生産方式一つの製品を連続的に作る自動車、家電
ロット生産方式別々の製品を単位ごとに作る食品、家電、電子機器
個別生産方式顧客の要望・注文に応じて作る建築、オーダーメイド家具
機能別生産方式製品を機械の設置場所へ移動させて作るオーダーメイド品、少量品
セル生産方式ライン生産方式と機能別生産方式の中間的な性質をもつ電子機器、精密機器

ラインレイアウトとタクトタイム

「どの機械をどこに置くか(レイアウト)」、「1個あたり何秒で作るか(タクトタイム)」を計算します。
ここで計算をミスすると、後で現場が大混乱になるため、CADを使って綿密にシミュレーションを行います。


2. 生産準備:量産に向けた武器揃え

机上の計算が終わったら、実際にモノを作るための準備に入ります。

設備の選定・導入

加工機、組立ロボット、検査機など、数千万円〜数億円規模の設備導入に関わることもあります。
メーカーと仕様を詰め、工場に据え付けます。

  • 加工機
  • 組立機
  • 検査機
  • 自動搬送設備

治具(ジグ)・金型の手配

ここが地味ですが超重要です。
作業者が迷わずセットでき、品質が安定する「治具」を設計します。

Onobuさん

Onobuの体験談
僕は最初、図面を読めないし書くのも苦手でした。
今でも苦手です。
「治具仕様書」を書くのに冷や汗をかいた記憶があります。 しかし、これが適当だと使い物にならない治具が出来上がり、現場から総スカンを食らいます。
「現場が使いやすいかどうか」を想像する力が、CADのスキル以上に重要です。


3. 量産立ち上げ:試練の時

設備と道具が揃ったら、実際にモノを流します。しかし、最初から上手くいくことはまずありません。

試作評価・条件出し

「温度」「圧力」「スピード」など、良品が出るギリギリの条件(パラメータ)を探り当てます。

初期流動管理

量産開始直後はトラブルの連続です。
生産技術が現場に張り付き、不良が出たら即対応。
「設備が止まった!」「寸法が出ない!」という現場の悲鳴に対応しながら、ラインを安定させていきます。


4. 工程改善:これぞ生産技術の醍醐味

ラインが動き出した後も、仕事は終わりません。
むしろここからが本番。
「昨日より今日、今日より明日」良くしていく活動です。

生産効率の改善(IE手法)

  • 作業者の歩く距離を1歩減らす
  • 設備の待ち時間を0.5秒削る
  • ボトルネック工程を解消する

こうした「チリツモ」の積み重ねで、工場の利益率を改善します。

他部署との連携と「壁」

生産技術は、設計・製造・品質管理・購買など、あらゆる部署の中心(ハブ)になります。

Onobuさん

[Onobuの本音:板挟みのリアル]
「他部署との連携」というと聞こえはいいですが、実際は「調整役」という名の泥臭い仕事です。
改善案を出しても「それは生技の仕事でしょ?」と製造に逃げられ、設計からは「仕様変更は無理」と断られ…。

部署間の壁が厚い会社だと、技術力よりも「根回し力」や「交渉力」が必要になります。これがリアルです。


生技に向いている人・向いていない人

28年間見てきて感じた、生産技術に向いている人の特徴です。

✅ 向いている人

  • 「なぜ?」を突き詰められる人(論理的思考力)
  • 現場の人と仲良くできる人(コミュニケーション能力)
  • 地味な改善を楽しめる人
  • 機械いじりやプラモデルが好きな人

❌ 向いていない人

  • デスクワークだけで完結したい人(現場に出ないと仕事になりません)
  • マニュアル通りの仕事しかしたくない人(トラブル対応が日常です)
  • 潔癖症の人(油や埃とは無縁ではいられません)

Onobuさん

離れた今だから思う事
僕は「向いている人」の特徴は確かに兼ね備えていますし、それなりに業務を進める事もできました。
ですが、それでもずっと自分の中で気持ちは常に曇り空
気分が晴れる事はなく、心は疲弊するばかりでした。

思い返してみれば、「向いていない人」の特徴により色濃くマッチしています。


まとめ:工場の未来を作る仕事

生産技術は、単に機械を導入するだけの仕事ではありません。
「製品が世に出るまでの、すべての仕組みを作る」クリエイティブで責任重大な仕事です。

泥臭いことも多いですが、自分の設計したラインから製品が次々と生み出され、
それが世界中で使われる喜びは、他の職種では味わえません。

「ものづくりの中心」で働きたいなら、生産技術は最高のフィールドです。

あなたの工場では、生技と現場の関係はどうですか?
「うちはこんな改善をしてる!」「生技と喧嘩した(笑)」など、ぜひコメントで教えてください!