工場には、製品を実際に作る「製造部門(直接部門)」と、工場全体を支える「間接部門」があります。
その中でも、生産性・品質・安全を支える重要な役割を担うのが 生産技術(Production Engineering) です。
「生産技術って何をしてる部署?」
「製造とはどう違うの?」
そんな疑問を持つ人向けに、この記事では生産技術の具体的な仕事内容を、わかりやすく、実務に近い形で解説していきます。
☆この記事を読んでわかる事
- 【生産技術の仕事の流れがひと目でわかる】
- 【現場でどんなスキルが求められるか理解できる】
- 【工場勤務を検討している人が、自分に向いているか判断できる】
- 【将来設計にも役立つ“工場のリアル”が手に入る】
生産技術とは?
生産技術は、「どうやって効率よく安全に製品を作る仕組みをつくるか」 を専門とする技術職です。
Wikipedia では以下のように定義されています。
生産技術(せいさんぎじゅつ、英: production technology)とは、
工業製品など具体的に「もの」を作っていく際に、設計する工程(生産計画)と、それに従い実際に「もの」を作り出す工程(生産)をつなぎ、いかにして品質高く、作りやすく、効率的に生産するか、という方法を工程として設計する技術を指す。
つまり生産技術の役割は、
製品を量産できる状態にするまでのすべてを設計し、改善し続けること。
大きく分けて、以下の5つの領域に分類されます。
- 工程設計
- 生産準備
- 量産立ち上げ
- 工程改善
- 新技術導入・安全対策・他部署連携
それぞれ詳しく見ていきましょう。
工程設計
製品をどのような手順と設備で作るのが最適なのか ―
その“生産方式の設計”から生産技術の仕事は始まります。

生産方式の検討
製品の特性や生産数量に合わせて最適な方式を選びます。
| 特徴 | 代表例 | |
| ライン生産方式 | 一つの製品を連続的に作る | 自動車、家電 |
| ロット生産方式 | 別々の製品を単位ごとに作る | 食品、家電、電子機器 |
| 個別生産方式 | 顧客の要望・注文に応じて作る | 建築、オーダーメイド家具 |
| 機能別生産方式 | 製品を機械の設置場所へ移動させて作る | オーダーメイド品、少量品 |
| セル生産方式 | ライン生産方式と機能別生産方式の中間的な性質をもつ | 電子機器、精密機器 |
生産ラインの設計・レイアウト
生産効率、運搬、作業者の動線、安全などを考慮し、最適な設備配置や工程順序を設計します。
CADなどを用いてレイアウト図を作成することもあります。
タクトタイム設定
必要な生産量を達成するために、1つの製品を生産ラインで処理する目標時間を設定します。
生産計画に基づき、生産ライン設計やレイアウト検討の段階でタクトタイムは設定します。
必要設備の選定・導入
- 加工機
- 組立機
- 検査機
- 自動搬送設備
など、必要な機械の仕様検討からメーカー調整、据え付けまで担当します。
生産準備
量産に向けた細かな準備を整えるフェーズです。

治具・金型・自動機等の設計・手配
安定した品質で効率よく作業できるよう、治具・金型・専用装置を自社設計、もしくは外注で製作します。
Onobuさん
体験談
僕は、図面を読むのも書くのも苦手です。
というより経験値が少ないので、「治具仕様設計」を書くのに最初はとても苦労しました。
これが無いと自社でも外注でも治具が作れないので、注意が必要です。
作業手順・標準書作成
現場作業者が迷わず品質を守れるよう、
- 作業手順
- 重点ポイント
- 注意事項
などをまとめた標準書を作成します。
量産立ち上げ
生産ラインが実際に動くフェーズです。

試作品製造・評価
試作品を生産ラインで作り、以下を評価します。
- 設備の安定性
- 品質
- 作業性
- サイクルタイム
量産移管・条件出し
試作での評価をもとに、量産に向けた最終的な生産条件
- 温度
- 圧力
- 速度
- 治具位置
- 工具条件
量産に必要な各種条件を決定します。
初期流動管理
量産開始直後は不良が出やすい時期です。
生産技術が現場に張り付き、
- 品質確認
- 設備調整
- 作業方法の改善
など、安定生産に導くまで支援します。
工程改善(もっとも生産技術らしい仕事)
生産技術の大きな使命は「現場改善を続けること」。

生産効率の改善
- 作業時間短縮(IE手法)
- 設備改善
- 自動化・省人化
- 作業者動線の見直し
など、ムダ取りにより生産性を向上させます。
品質改善
製造工程が原因で発生する品質問題に対し、原因究明と再発防止策を講じます。
統計的な手法を用いることもあります
- QC手法
- 統計解析
- 要因分析(特性要因図、FMEA など)
を用いることもあります。
コスト削減
生産工程における無駄を排除し、材料費、加工費、労務費などのコスト削減に取り組みます
- 材料費の最適化
- 工程短縮
- 設備ランニングコスト低減
など、利益率を高める重要な業務です。
生産能力向上
より多くの製品を生産できるよう、設備の増設や工程の見直しなどを行います。
増産が必要な場合、
- 設備増設
- 工程再編
- ボトルネック改善
が求められます。
その他(生産技術の幅広さ)

新技術の開発・導入
生産性の向上や品質安定に繋がる新しい生産技術や工法の情報収集、研究開発、現場への導入を行います。
- 新しい加工方法
- 自動化技術
- IoT・データ活用
- ロボット導入
など、工場の未来をつくる業務です。
他部署との連携
生産技術は社内の“ハブ”のような存在。
設計・品質・購買・製造など、多くの部署と連携して仕事を進めます。
Onobuさん
本音
多くの部署と連携って聞くと「カッコイイ」と思うかもですが、僕の本音は「提案しても、それは生技の仕事でしょってイチャモンばっかりつけてくる」ので、部署間の業務線引きが曖昧な会社は非常に仕事が進めにくいです。
海外工場の支援
海外工場の立ち上げ支援や教育を担当する企業も増えています。
安全対策
設備や作業のリスクを評価し、安全柵やセンサーなどの対策を実施します。
生産技術に向いている人の特徴
生産技術職に向いている人の特徴
- 論理的に考え、原因を見つけるのが得意
- 現場の人と話しながら課題解決できる
- 改善意欲が高い
- CAD・機械・電気・統計などの知識に興味がある
- コツコツ積み上げる仕事が好き
ものづくりの中心に関わりたい人には、とてもやりがいのある仕事です。
まとめ

生産技術は、製品が安定して量産されるまでの“すべての仕組みづくり”を担う重要な職種です。
効率的・安全・高品質な生産体制をつくり続けること。
これが生産技術の使命です。
あなたの職場ではどんな改善が行われていますか?
「ライン改善で苦労した」「立ち上げで学んだこと」など、あなた自身の経験もぜひコメントで共有してください。
生産技術職の主な業務内容
- 工程設計:どのような手順・設備で製品を作るかを計画
- 生産準備:治具・金型・自動機の設計や手配、標準書の作成
- 立ち上げ支援:試作・評価・量産条件の設定と製造部門への引き渡し
- 初期流動管理:量産初期の品質・工程安定化を監視・改善
- 工程改善:不良低減・効率化・自動化などの施策立案と実行
- 品質改善:統計的手法や原因分析による再発防止
- コスト削減:材料費・加工費・労務費の見直し
- 生産能力向上:設備増設や工程見直しによる生産性強化
- 新技術導入:新しい工法や設備の情報収集・導入
- 他部署連携:設計・製造・品質・購買などとの調整業務
- 海外支援:海外工場への技術指導や立ち上げ支援
- 安全対策・IE分析:作業環境の安全性評価や効率分析
次にやるべきこと
- 自分が生産技術職に向いているか、この記事の内容と照らし合わせて判断
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